【伊野】仁淀川紙のこいのぼり|紙の町いの町がつくる、水に泳ぐこいのぼり
こどもの日が近づくころ、高知県いの町の仁淀川には、空ではなく「水の中」を泳ぐこいのぼりが現れます。川面いっぱいに並んだ色とりどりのこいのぼりが、ゆっくりと流れに乗って進んでいく光景は、この時期のいの町を代表する風物詩です。
「仁淀川紙のこいのぼり」は、いの町の特産である紙(不織布)で作ったこいのぼりを、清流仁淀川に浮かべるイベントとして、毎年ゴールデンウィークに開催されています。
約200匹もの紙のこいのぼりが仁淀川を泳ぐ姿を一目見ようと、町内外から多くの家族連れや観光客が訪れます。

はじまりと受賞歴
仁淀川紙のこいのぼりは、平成7年(1995年)に始まりました。当初から、いの町の人たちが「仁淀川の清流」と「紙の町・伊野(いの)」という二つの特徴を一緒にPRできる取り組みとして、地域ぐるみで育ててきたイベントです。
第5回(平成11年度)には、自治省(当時)が選ぶ「第4回ふるさとイベント大賞」の大賞(自治大臣表彰)を受賞しています。
全国各地の地域イベントの中から選ばれたこの受賞は、「川で泳ぐ紙のこいのぼり」というユニークさと、地域の協力体制が高く評価された結果と言えます。
「紙のこいのぼり」の仕組みと素材

こいのぼりに使われているのは、いの町特産の紙「不織布」です。不織布は繊維を織らずに絡み合わせたシート状の素材で、軽くて破れにくく、水に濡れても比較的丈夫であることが特徴です。
こいのぼりは、仁淀川橋の下流側から波川公園周辺の川面に一列に並べて浮かべられ、約200匹前後が同時に泳ぐ様子は壮観です。
空を泳ぐこいのぼりとは違い、川の水面近くで静かに進む姿は、仁淀川の透明な水の色や流れ方によって表情が変わります。清流の青さと、紙のこいのぼりの色彩が重なり合う景色は、「仁淀川ならでは」のものです。
開催時期と会場

イベントは毎年、5月3日〜5日の3日間、ゴールデンウィークに合わせて開催されます。
会場は、いの町波川の「波川公園周辺」で、国道33号の仁淀川橋の近くです。仁淀川の河原に下りやすく、川遊びやバーベキューでもよく利用される場所ですが、この三日間は紙のこいのぼりが主役になります。

会場で楽しめる内容
仁淀川紙のこいのぼりは、こいのぼりを見るだけでなく、河原全体が「にぎわいの場」になるイベントです。2025年の第29回の例では、次のような催しが行われました。
- 仁淀川ふるさと市(いの町のグルメ・特産品・雑貨の販売)
- 小学生以下対象の宝探しイベント
- アメゴ釣り大会
- SUP(サップ)体験(事前予約制・定員に余裕があれば当日参加可)
日中は、川原で遊ぶ子どもたちと、バーベキューを楽しむ家族連れ、写真撮影をする人たちでにぎわい、頭上を見上げると仁淀川橋、目の前には紙のこいのぼりと清流という、いの町らしい風景が広がります。
最終日の午後には、「水中こいのぼり」の一部が来場者にプレゼントされる企画もあります。整理券が配布され、手元に残る思い出として人気です。
道の駅土佐和紙工芸村前の紙のこいのぼり
波川公園周辺とは別に、少し上流の道の駅土佐和紙工芸村前の仁淀川でも、紙のこいのぼりが泳ぐ期間が設けられる年もありました。
こちらは、道の駅土佐和紙工芸村の宿泊・温泉・体験メニューと組み合わせて楽しめる場所です。波川公園の会場と比べると規模はやや小さめですが、「紙の町いの町」と「仁淀川」を一度に感じられるスポットとして、観光ルートに組み込みやすいエリアと言えます。

観光で訪れるときのポイント
観光客の立場から仁淀川紙のこいのぼりを楽しむ際には、次のような点を意識すると、現地で過ごしやすくなります。
- 混雑が予想されるため、できるだけ公共交通機関やシャトルバスの利用が推奨されていること
- 会場付近に駐車場はあるものの、ピーク時には満車になることが多いこと
- 河原は石が多く、濡れて滑りやすい場所もあるため、歩きやすい靴や水に濡れても良い服装が安心であること
地域文化としての「紙のこいのぼり」

仁淀川紙のこいのぼりは、単なる観光イベントではなく、いの町の「自然」と「産業」と「人」を結びつける地域文化の一例です。
清流仁淀川は、国の水質調査でもたびたび一級河川水質ランキング1位となってきた川で、「仁淀ブルー」と呼ばれるほどの透明度の高さで知られています。
一方、いの町は千年以上の歴史を持つとされる土佐和紙の産地であり、紙産業と川の関わりは古くから続いてきました。
紙のこいのぼりは、この二つを今の時代の形で結びつけた取り組みです。
- 清流の上を紙のこいのぼりが泳ぐことで、仁淀川の美しさを伝える
- 不織布という紙素材を使うことで、「紙の町いの町」を印象づける
- 子どもたちや地域の団体が制作に関わることで、「参加するお祭り」として記憶される

こうした積み重ねが評価され、ふるさとイベント大賞の大賞受賞にもつながりました。
おわりに
水の中を泳ぐこいのぼりという発想は、一見すると少し不思議に思えるかもしれません。しかし、清流仁淀川の上をゆったりと進む紙のこいのぼりを眺めていると、「鯉本来の場所に帰ってきた」ような、自然な光景にも感じられます。
仁淀川の青さ、紙のこいのぼりの色彩、河原で過ごす家族の姿。それらが一体となって生まれる三日間の景色は、いの町が大事にしてきたものを象徴する風景と言えます。
ゴールデンウィークにいの町を訪れる機会があれば、ぜひ仁淀川紙のこいのぼりの会場に足を運んでみてください。写真だけでは伝わらない、水の色・風の感触・人のにぎわいを実感できるはずです。