いの町の魅力

【吾北】吾北の棚田と米作り|山あいに受け継がれる水田のくらし

貴志諭里

高知県いの町の山あいに広がる吾北地区は、仁淀川の支流に沿って集落と棚田が連なる、中山間地らしい風景が残るエリアです。

とくに上東上八川・津賀谷などには石垣の棚田が多く、急斜面に小さな田んぼが何段も重なる景観は、「いの町の山あいの暮らし」を象徴する存在になっています。

この記事では、吾北の棚田がどんな場所にあり、どのように米作りが続けられているのか、そして地域ぐるみで守ろうとしている取り組みをまとめました。 

吾北の棚田が広がる場所

吾北地区(旧吾北村エリア)の東側に位置する 上東地区 は、国道439号沿いに土佐町へとつながる中山間地域です。仁淀川の支流である 上八川川沿いに集落が点在し、農地は標高およそ280〜500mに位置しています。狭小な田や棚田が多い急峻な地形ですが、寒暖差のある気候と清流の恵みを活かし、良質な水稲栽培が行われています。

同じく上八川川沿いにある 津賀谷集落も、石積みの棚田が広がる場所として知られています。棚田のほぼ中央には「八所河内神社」が鎮座しており、地域を見守るその静かな佇まいは、幾重にも重なる棚田の景観と調和し、美しい日本の原風景を描き出しています。

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急な斜面に段々田が連なる吾北の棚田は、見た目は美しい一方で、機械が入りにくく、水の管理や草刈りにも手間がかかる場所です。それでも清らかな沢水と冷涼な空気に支えられ、棚田ならではの米作りが続けられています。

棚田と米作りの一年

吾北の棚田でも、基本的な米作りの流れは「田植え → 管理 → 稲刈り → 乾燥・調整」というサイクルで進みます。

上東地区や吾北の学校では、5月に田植えをして、10月ごろに稲刈りを行う取り組みが行われており、吾北中学校・高知追手前高等学校吾北分校の生徒が、棚田で田植えから稲刈り・脱穀までを取り組んだりしています。

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観光向けの体験としても、いの町では5月下旬に一般向けの田植え体験、秋の稲刈り体験が企画されることがあり、土の感触や農家の話を聞きながら、実際の作業を体験できる機会が用意されています。

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段々田では、水の出入りも一枚ごとに調整しなければならず、下の田に迷惑をかけないよう水位を見ながらこまめに管理します。特に大変なのが雑草対策です。雑草の種子の発芽を抑えるために『代掻き(しろかき)』という作業で土を泥状にならし、畦や法面の草刈りを繰り返します。

そうして手をかけて育てられた稲は、秋になると棚田一面を黄金色に染めます。機械が入らない区画では、今も手刈りや小型機械を使って丁寧に収穫が行われています。

上東地区と「仁淀米」・ブランド米づくり

上東地区では、地域の農家が力を合わせて「農事組合法人上東」を立ち上げ、棚田を含む中山間地での水稲栽培を中心に、地域の農業を支える仕組みづくりが進められてきました。

ふるさと納税の返礼品としても、上東地域の棚田で作った「上東産 仁淀米」が紹介されており、「清流・仁淀川を育む水が流れる棚田で育てたお米」として、数量限定で出荷されています。

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また、いの町内の別地域では「によどブルー米」などのブランド米づくりも行われており、清流の水と中山間地の気候を活かした“仁淀川流域ならではの米”として発信されています。

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吾北地区の地域おこし協力隊募集情報でも、山間地にある棚田でブランド米を地域ぐるみで生産していることが紹介されており、農事組合法人上東で米作りのノウハウを学べる場として位置づけられています。

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地域ぐるみで守る棚田:集落営農と観光・教育の連携

吾北エリアの「津賀谷の棚田」に代表される石積みの美しい景観は、単に自然に残ったものではなく、地域の人々の「集落営農」という形での結束によって守られています。

草刈りや石積みの補修、水路の管理など、個々の農家だけでなく、集落全体で協力し合いながら農地と景観を維持してきました。

こうして地域ぐるみで守られた棚田は、現在では「仁淀ブルー体験博」の体験イベントで「棚田の朝ごはん体験」や「棚田のアオイネコ」といったプログラムを通じて、訪れる人が景観と食を味わえる交流の場としても活かされています。

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学校教育の現場でも、吾北中学校と高知追手前高等学校吾北分校が棚田で合同の稲刈りを行い、収穫したお米をイベントで活用するなど、子どもたちが実際に田んぼに入りながら農業を学ぶ取り組みがなされています。

吾北の棚田に出会うためのヒント

観光で吾北の棚田に触れてみたい場合は、季節を意識してルートを組むと、より深く楽しめます。

  • 5月前後:田植えの時期。体験プログラムが行われる年もあります。
  • 9〜10月:稲穂が色づく季節。黄金色の棚田と山の緑のコントラストが見頃です。
  • 秋〜冬:棚田の火まつりや、獅子舞などの行事と組み合わせると、棚田が地域文化と結びついている様子がよくわかります。

いずれの場合も、棚田や田んぼはほとんどが私有地です。車を停める場所、写真撮影の位置、あぜ道や農道への立ち入りなどは、マナーを守りつつ、可能であれば地元の人に一言声をかけてから楽しむと、お互いに気持ちよく過ごせます。

将来いの町への移住や半農半Xを考えている人にとっては、農事組合法人上東や、地域おこし協力隊の活動内容を知ることで、「吾北の棚田で農業を学びながら暮らす」という選択肢も具体的にイメージしやすくなるはずです。

おわりに

吾北の棚田は、山あいの暮らしと米作りの技術、地域の絆が積み重なった“生活の風景”です。

急斜面の段々田に水を引き、草を刈り、子どもたちと田植えをし、秋には黄金色の稲穂を刈り取る。その一つひとつの営みの先に、「上東産 仁淀米」や棚田体験プログラム、火まつりや獅子舞といった文化がつながっています。

いの町の山あいを訪れる機会があれば、ぜひ吾北の棚田にも目を向けてみてください。
田んぼの形や水の音、そこで働く人の姿から、「山の米づくりがどのように受け継がれてきたのか」が、静かに伝わってくるはずです。

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